non fiction。

エイプリルフール前日に、嘘の様な本当の話を。



先月、2月22日。

第81回アカデミー賞で
映画「おくりびと」が、外国語映画賞を受賞。

テレビでは、どのチャンネルも「おくりびと」のニュースを放送し
また、映画館には、沢山の人が押し寄せた。

「感動しました!」や、ネットでは「納棺師になりたい!」との声が上がり
「ああ、日本人は本当に流されやすいな」と、改めて実感した。

そんな中、先日、おれも「おくりびと」を観た。

いつも、流行ってる間はスルーするおれだけど
今回は、少し違う。

何故なら、おれも納棺をしているからだ。

ただ、納棺師ではない。

昼間は霊柩車の運転手、それが終わると寝台車の運転手になり
病院からご自宅、または葬儀会館にご遺体の搬送をし
搬送先で、ドライアイス等の処置をする。

事の始まりは、友人の「面白そうな仕事あるで」という一言。

車の運転が好きなおれは「霊柩車の運転手してる人は居らんな」と
何も知らずに面接へ行った。

面接では、映画の通り、何も聞かされずに即採用。

詳しい事を聞こうとしても「やれば分かる、合わんかったら辞めていいから」とだけ云われた。

「このパターンは危ないな」と思いつつも
駄目だと分かっている事をするのがおれなので
とにかくやってみる事にした。

結果、これまた映画の通り、求人広告は本当ではなく
寝ていても食事をしていても、常に24時間仕事の電話がかかってくる。

あ、映画の中の「実務労働時間わずか」は本当かな。

運転を除けば、仕事自体は1件につき3~40分で終わるから。

まぁ、嘘を吐かないと、誰もこの仕事をしようとは思わない。

「24時間仕事の待機をしてもらって、運転だけじゃなくご遺体を触ります。
休みは月4日だけですし、精神的に辛く、みんなすぐ辞めていますけどいいですか?」

なんて、誰もやらないでしょう?

もう数ヶ月続けている馬鹿がここに居りはしますが。

ご遺体はね、最初抵抗があったけど、1週間で慣れた。

夜中にご遺体と2人っきりでドライブして
左斜め後ろを向けば顔を合わせる状況も、今じゃ何とも思わない。

たまに「声」を出すらしいけどね。

水死体なんかは、体にガスが溜まるから
そのガスが出る時に、そう、まるでゲップみたいに「あ゛~」となる。

あ、それとね、映画は素晴らしいけど
ご遺体は、あんなに生き生きしていないよ。

亡くなった人を撮影するなんてできないから、仕方ないけどさ。

もう、骨と皮しか残っていなかったり
逆に、亡くなってからも点滴をされ続けて
破裂寸前までゴム手袋に水を入れた様に
ちょっと触っただけで、皮膚が裂けてしまいそうだったりね。

それに、殆どお年寄りの方だし。

若い人も居るけれど、そういうのは大体自殺や事故で
ドラマで見た事があると思うけど、ジッパーの付いた袋に入っている。

何処かが千切れていたり、とにかく見れるものじゃない。

そういった場合は、エンバーミングを施したりする場合もあって
そこで綺麗に復元、いや、形成する。

そこにご遺体を引き取りに行くと、大きな冷蔵庫が開いて
中で数人冷凍保存されているのを見た時は、流石に「おお」と思った。

「これから行くとこはキツいでー。
でもあれやな、ryu君は案外ケロっとしてそうやなw」なんて云われ
その通り、ケロっとしていた。

司法解剖だって、首から下腹部にかけて切り開かれてはいるけれど
一応雑には縫ってあるから、そこまで見れないものではないし。

そうやって慣れてはきたけど、まだ慣れない事が2つある。

1つは、見えない「もの」。

常に24時間待機の上、週に1~2回は、ある場所で完全にカンヅメになる。

葬儀会館の横にある一軒家で待機をするのだ。

そこは夜になると、待機をする人間以外は出入りをする事が皆無で
何故か、自分1人のはずなのに「人の歩く音」が聞こえる。

さらには、閉めたはずのドアから
何故か、蝶番の「ギィ」という軋む音もする。

ベッドのある部屋に入る時、電子レンジを使った時の様な
なんていうかな、こう「ブン!」とした感じがして
「なんだこれ、おかしいな」と思っていたら
ある時「あの部屋な、1人『居る』らしいねん。
前、霊感のある子が男の人を見たらしいわ」と。

なるほど、それで「歩いたり出入りしている」のね。

うん、気が狂いそうになるぜ、マジでw

仕事中も、ある意味「2人」で、待機していても「2人」かよw

頼むぜおいw

気にしても仕方ないから、PSPしているけどさw

さぁ、笑いはこのぐらいでいいとして。

もう1つは「悲しさ」。

毎日誰かのお葬式で、毎日誰かのご遺体を運んで
毎日人の涙を見て、毎日それの繰り返しで。

別に悲しくて困っているんじゃない。

「分からない」から困るの。

ある日の、まだ若いであろう男性の告別式。
霊柩車にお棺をご乗棺させて頂いて、喪主様を助手席へご案内する。

その後、自分も運転席に乗り込み、エンジンをかける。

いつも、助手席の窓は少しだけ開けておくんだけど
その時は女性の喪主様で、ひたすら隣で泣き崩れていて
「余程悲しいんだろうな」と思っていると
また別の女性が、少し開いた窓から手を入れて
喪主様の頭を撫でながら


「もう泣かんでいいよ、良くがんばった、あんたは良くやった」

「ううん・・・ううん・・・」

「私が悪いねん、私のせいやねん、やから泣かんでええ・・・」

「違う!私が!・・・私がお父さんを!」

「自分を責めたらアカン、みんなのせいかもしれん・・・」

「ああ・・・ああああああ!」


出発した後も、それはすごい泣き方を続け
おれは、無表情で前と後続の車を確認しながら運転をしていたけれど
気付いたら涙だけ流してしまっていて、気付かれないようにすぐ拭った。

何も知らないおれが、喪主様に言葉をかける事はできない。

できないし、しない方が良い。

それでも、そんなに泣いている人の気持ちを「理解できない」。

「ごめんなさい、悲しいんですよね。
でも、申し訳ないのですが、おれには分かりません。
他人だからというより、根本的に分からないんです。
こんなのが最後の運転手で本当にすみません」と思いながら運転を続けた。

駄目だよ、こんなんじゃあ。

耐えられない。

耐えられないと思いながら耐え続けて
すっかり「慣れてしまった」。

もっと色色阿漕な話もあるけれど
こういう事を踏まえて「~になりたい!」と思っているのだろうか。

映画は素晴らしいし、あれもまた事実だ。

だが、実際にご遺体の体の色が変わっていたりしていても
ご当家様の前で、嫌な顔を見せずに「それ」ができるのか?

亡くなると、体は血液の関係で赤色→緑色→黒色となる。

それでもやりたいのなら、おれみたいな半端はしないで欲しい。

あと、自分の時間は無くなるかもよ。

メシ食ってる時間すらない時も多多ある。

一度36時間ぐらい運転し続けたし。

メシ食うために働いているのに、メシ食えないなんて
おれにとっては、給料貰うために働いているのに給料貰えないのと同意だわ。

映画みたいな扱いをしてくれる会社なら続けるかもだけど
ハイリスクローリターンで、一生は居れないと思っている。

うちは下手したら死ぬ可能性もあるし。

ご遺体お迎えに行って、もし、そのご遺体が感染症だった場合
自分に切り傷でもあったら、そこから感染してしまうから。

病院側は、わざわざ伝えてくれないの。

常に消毒していないと、真剣に笑えない・・・。

さて、そんな感じの「ノンフィクション」如何でしたでしょうか。

皆様方におかれましては
面白おかしくエイプリルフールを過ごされます事を。
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by ryu-cat | 2009-03-31 23:36 | 日常雑記 | Comments(2)
Commented by まりおん(’’; at 2009-04-01 20:34 x
・・・・・・オイラには耐えれないな。。。

まぁ映画を否定はしないがどうしても“美化”されるだろうよ。
あれだって趣味じゃないし結局は“金”が動くわけで・・・と、あまりいい話ではないな。

その「見えないもの」は耐えれん。。。あと感染症はマジで笑えないなぁ~・・・病院側が伝えてくれないってそれはいいのか??

つか。。。また自分の時間がない仕事を・・・そのうち唐突にやってくるぞ。
無理するなよ~。。。

そんなオイラは会社に苛立って仕方がない・・・
この不公平な待遇はヽ(`Д´)ノプンプン
Commented by ryu-cat at 2009-04-02 22:49
うーん、こう云うたらあれやけど
おれは別に、美化はされてないと思うねん。

本当に「ああいう感じ」だもの。

ただ、お葬儀というものに関わる機会が少ないから
たまに見ると、とても良く見えるんかなと。

お葬儀自体しない事もあって
「あ、もう焼いといてw」なんてパターンもある時代やから。

感染症については、伝える義務がないんちゃう?
義務じゃない事はしてくれへんもん。

そして、きっと不意に「くる」さ。

その時は、その時。

まぁ、心配してくれてありがとう(’’*

そっちもあまりストレス溜めへんようにw


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